山からの便り

山の仲間の皆さん元気ですか。

今年の冬は例年になく大雪で小屋の周りは3メートルの雪が積もっています。夏山には大勢の人が来ましたが、今はおとずれる人もなく君達ザイル仲間のことを思い出している。俺もあの頃は若かったけれど、君達山岳部の人達も若かったね。君達と酒を飲みながら夜遅くまで語り明かした。社会の事,青春について、そして恋愛論まで話はつきなかった。

今年は猿やカモシカが冬支度をする暇もなく雪が積もったので、小屋のあたりをうろうろしているよ。君のザイルの友達「後藤君」は元気にしているかね?毎年君達はザイルと酒を持ってここに来たね。あの岸壁は今も雄大にそそり立って人を寄せ付けない威容を崩しては居ない。今は雪をかぶってまさに氷壁となっているよ。

あの氷壁をやろうと言ったのは後藤君だったね。あの時は俺も若かったし君達も若かった。ハーケンとカラビナだけで、新しいナイロンザイルを始めて使った感じはわくわくしたものだった。第2バットレスからチムニーを伝わり崩れやすい岩質には参ったけれど、3人とも恐ろしい事だとは思わなかったね。今思うと命知らずの暴走族みたいなものだと思っている。

その夜の酒は格別なものだったね。後藤君は自分ひとりでクライムした様に喜んで、三人で大いに飲んだものだった。あんな感激はあの後もにも先にもないと思うよ。山岳部のひとたちとその後会っているか?みんな、いいおじいちゃんになっているだろうな。会いたいものだ。春になったら是非とも来たまえ、秘密のコースを案内するよ。

俺も今では息子に小屋の経営をまかせて、全くの自由の身になった。ぼちぼちと山を歩いて楽しんでいるよ。山岳部の連中に会ったらよろしく言ってくれ。では又会う日まで元気で居て下さい。_004

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